君がいた部屋~二階階段前倉庫~
あたしは何も出来なかった。
近づく事も話しかける事も
それどころか
動く事さえ困難だと感じた。
キーンコーンカーンコーン
予鈴のチャイムが響き渡る。
まるで二人の邪魔をするかのように
だがその邪魔さえも二人には通用しない。
二人の耳にチャイムの音は届いているはずなのに
二人は離れようとはしなかった。
チャイムが鳴り終わり、二人はようやく離れた。
それでも、甘い雰囲気は漂っている。
あたしはまるで、ドラマのワンシーンを見ているようだった。
登場人物が、自分の知り合いのドラマ。
あたしはそんなシーンを見つめていた。
「次の時間サボる?」
そう言ったのは
陽介君だった。
桜は何かをねだるような目で彼を見つめながら言った。
「桜、嬉しい。…あ、」
桜は今気付いたように言った。
「美羽…」