君がいた部屋~二階階段前倉庫~


「ちょっと待って!」


その人はあたしの手首を掴んだ。


-左の方-


あたしは反射的に彼の手を振り払い、睨みつけた。


「ご免…。」


「さっきから何?っていうか、貴方誰?」


「俺は、井川翔太。3ーC」


井川って…


「本当にご免!!!いきなりそんな事言われたりしたらナンパと思うよな?マジご免。でもそんなつもりで声かけたんじゃないから。…許してくれる?」


井川先輩はそう言って頭を下げた。


何だかあたしも申し訳ないように思えてきた。


こんなに謝らなくていいのに。


「いやあの、こちらこそすいません。何か、怒ちゃって。」


「君が謝ることじゃないよ。悪いの俺だし。…あのさ、それこそナンパみたいだけど、名前教えてもらっていい?」


「三神美羽、です。2年C組です。」


「美羽ちゃんか、名前可愛い。」


あたしはドキってした。


女の子からはよくそう言われる。


でも…


男の子に、あんまり褒められたこと無い。


いや、初めて褒められた。




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