君がいた部屋~二階階段前倉庫~


「あ、ありがとうございます。」


「先輩だからってそんなに緊張して喋らなくていいんだよ。」


井川先輩は優しく微笑んだ。


ファンクラブが出来てもおかしくないぐらいの、透き通った、天使みたいな笑顔。


あたしはまたドキってした。


「…はい。」


あたしがそう答えると、井川先輩はふって笑って言った。


「だから緊張しなくていいのに。美羽ちゃんって可愛い。」


「え…」


名前さえ褒められたのだって初めてなのに、


名前以外でも可愛いって言われた。


今まで散々「可愛げのない奴」って、「愛想の欠片ももない奴」って、


そう言われてきた。


だから


お世辞って分かっててもちょっと嬉しかったりした。


分かってるのに、ドキドキした。


「じゃあ俺そろそろ行くわ。バイバイ美羽ちゃん。」


そう言って井川先輩は帰っていった。


井川翔太。


これがあたしと彼の出会いだった。









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