君がいた部屋~二階階段前倉庫~


周子さんはお通夜の日とお葬式の日の連絡の為に電話をしてくれた。


お通夜は明日、お葬式は明後日。


周子さんは大分疲れているようだった。


当たり前だ。


弟が死んだんだもん。


でも身内が死んだら悲しんでばかりいられない。


死んだら死んだなりの段取りがある。


しかもそれは簡単なものではないし。


今まで聞いた事もないような親戚に電話したり、よく分からない事を決めたりしないといけない。


あたしは、あれは悲しさを紛らわす為の一種のフェイクだと思う。


忙しくってよく分からなくなる。


でも


あたしの場合そういうわけにはいかない。


翔太は身内でも何でもないあかの他人。


あたしには、悲しさを紛らわすものは何もない。


ただ、この現実を受け止めるだけ。


これがあたしの仕事。


翔太はもういない。


あたしの事好きって言ってくれて、あたしの事心配してくれる人は、もういない…


また一人、あたしの大事な人は、あたしから離れていった。


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