君がいた部屋~二階階段前倉庫~
二階階段前
「三神さん、悪いけどフラスコ5つ持ってきて。」
あたしは化学の教師―秋本恵―にそう頼まれて倉庫に向かった。
学校の教師は成績のいい生徒に用事を頼む。
そういう生徒は教師に逆らわないからだ。
だからあたしはいろんな教師から用事を頼まれる。
別に構わなかった。
いつも一馬にこき使われるあたしにはそれくらいの事は何でもない。
そんなことよりも、今のあたしにとってもっと重要な事がある。
―リスカの跡―
冬休みに自ら作った手首の傷は、思っていたよりも深かった。
あと少しでも深く切っていたら動脈を切っていた可能性も高い。
そうなれば片付けるのが一苦労だ。
なのに…
またしたい
そういう衝動に駆られる。
あたしは首を振りながら倉庫のドアを開けた。