君がいた部屋~二階階段前倉庫~


「桜、」


あたしは桜に何か言わなくちゃいけないと思った。


泣いている桜は返事をしなかった。


「桜が謝る事も、泣く事も何も無いんだよ。桜はあたしが傷つかないようにって何も言わなかったんでしょ?」


桜は泣きながら小さく頷いた。


「だったら何で桜が謝るの?ね?だから謝らないで。」


やはり桜は何も言わなかった。


桜は今凄く傷ついてるんだ。


翔太があたしと付き合ってるって知って、それをあたしの為に隠そうとして、そしたら今度はその翔太が死んで、


桜は本当に翔太が好きだったんだね?


だけど


桜はあたしのことも大事にしてくれたんだね。


ご免ね。


桜を一人で悩ませてご免ね。


それからあたし達はまた一緒に泣いた。


大好きだった人はもういない。


だけど、


あたしには桜がいる。


悠美もいる。


だから


あたしはこれからも、ちゃんと生きていける。


そう信じた


まだ幸せな夜だった。




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