君がいた部屋~二階階段前倉庫~


もう嫌だ…


こんなの…やだ…


あたしは全速力で走り、その場から逃げた。


久しぶりにこんなに走った気がする。


後ろを振り返った。


桜達は追いかけては来なかった。


あたしは安堵して足を止めて前を見た。


そこにはあった。


長い間来ていなかった大好きな部屋


あたしの居場所


あたしは我を忘れて、思いっきりドアを開けた。


いた。


彼はいつも通りそこにいた。


…竜…


あたしは竜に駆け寄った。


竜はこっちを見て言った。


「久しぶりだな。三神美羽。」


あたしはこの時何を思ったのだろう?


分からない。


でも


どうしようもない程の安心感と、誰かがいる暖かさを、改めて知った。


そして気付いた。


あたしは…一人じゃない。


あたしには…まだ、竜がいてた。


竜は…あたしを受け入れてくれる。


よね?


「竜…」


「だから言っただろ?不幸になるって。」


あたしは記憶の糸を探る。


そうだ、


竜はあたしに忠告してくれた。


外に出るなと。


それを無視したのは…

あたし…


< 70 / 231 >

この作品をシェア

pagetop