【短編】ガラス箱のアリ
『コツコツ…』
ハイヒールの音が響く。
何日前からだろうか。
いや何年前からか。
ハイヒールの音がやむ。
ゆっくり頭だけ後ろに向かせる。
そこには誰もいなく、朝日がただただこちらに光を降り注いでいた。
『…コツ…コツコツ』
またハイヒールの音が響く。
誰もいない、朝日が降り注ぐ道に。
下を向いていた顔を空に向ける。
そして顔を向けた空を思いっきり睨んだ。
何がしたいのよ…。
もう見ないでよ。
どこにいるのよ。
何を見てるよの。
見ないでよ。