かすみ草の夢
その後も、遠くに住むカンジ君を見ることができるのは、彼が祥子ちゃんの家に遊びに来る夏休みとお正月だけだった。

しかも私にできるのは、遠くから、彼が祥子ちゃんと遊ぶのを見ることだけ。

カンジ君と話したい、もっと仲良くなりたいと思いつつも、消極的な私には、どうすることもできなかった。

ただ、あの時拾ったキーホルダーを眺めては、カンジ君のことを想った。

そして、彼が中学2年になった頃からは、部活が忙しいとかで夏休みには来なくなり、いつしかお正月にも来なくなってしまった。

私は、自分の恋心を祥子ちゃんにも打ち明けることなく、初恋は私の心の奥にしまわれた。

キーホルダーも、めったに開けることのない宝箱にしまいこみ、手にすることもなくなった。



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