かすみ草の夢
正門を入ると、サークルの勧誘の人たちが大勢いた。

カンジ君もその中の一人だった。

私は、すぐにカンジ君に気づいた。

あれから8年。

8年分大人になったカンジ君は、精悍になっていはいたけれど、二重の大きな目と、天然パーマの黒髪はそのままだった。

でも、カンジ君は、まったく私に気づかなかったようだった。

一度ぶつかっただけの女の子を覚えているはずはない。

わかってはいたが、少しさみしかった。

カンジ君に手渡された、テニスサークルのチラシ。

ここに入ろう、そう決めて、私は入学式の会場である講堂に向かった。



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