かすみ草の夢
「あー、じゃあ、さっさと部室にこれ置いて俺たちも帰るか」

私はみのりちゃんの言葉通りに送ると言い出しそうなカンジ先輩に、先回りして言った。

「はい。でも、私、わざわざ送っていただかなくても一人で帰れますから、気になさらないで下さい」

「え?いや、でも…。えーっと。
あ、真奈美、家どこだっけ?」

私はどきっとしながら答えた。

「桜ヶ丘です…」

私がそう言うと、カンジ先輩は表情を明るくした。

「あ、そうなんだ。桜ヶ丘ならよく知ってるよ。いとこが住んでるんだ。
最近は行ってないけど、小さい頃はよく遊びに行ったもんだよ」

カンジ先輩は懐かしそうにそう言って微笑んだ。

< 38 / 111 >

この作品をシェア

pagetop