かすみ草の夢
「ふうん。でも、それならそう言ってもよかったんじゃない?
何でバイトって嘘ついたんだろ、先輩」

優衣の疑問はもっともだ。

「俺もそう思って後で先輩に聞いてみたんだよ。
そしたら、『私も見に行く』って言われそうだったから、だってさ」

「ああ、たしかに、夏希なら言いそう」

優衣が頷いた。

「だろ?だからさ、カンジ先輩、本当は夏希のことはうざいと思ってんじゃないの?
ただ、ああいう性格の人だから、表には出さないだけでさ」

「そっか。カンジ先輩、誰にでも優しいものね」

優衣はグラスをテーブルにおいて、カンジ先輩の方を見た。

うん、たしかにカンジ先輩はみんなに優しい。

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