かすみ草の夢
「真奈美、ちょっといい?」

「はい」

カンジ先輩についていく。

誰もいないロビーのソファまで来て、カンジ先輩に促されて座った。

「今日のこと、本当にごめんな」

さっき健太と優衣の謝罪を避けて出てきたのに、今度はまたカンジ先輩に謝られてしまった。

「もう、謝らないでください。
カンジ先輩が悪いわけじゃないんですから」

しかし、カンジ先輩は深刻な表情を緩めなかった。

「いや。俺、まだ、正直に真奈美に言ってなかったことがあるんだ。
たぶん、これを言ったら真奈美に嫌われると思って、ゲレンデではどうしても言えなかった。
でもやっぱり卑怯な自分が許せなくて…」

ああ、もしかして、さっき健太が言ってたこと…

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