かすみ草の夢
ああ、またカンジ先輩に余計な気を使わせちゃう。

しばらく胸の中の葛藤と戦っていたけれど、私は覚悟を決めて顔を上げた。

「カンジ先輩!」
「真奈美!」

え?

ほぼ同時だった。

「あ、ごめん、何?」

「いえ、カンジ先輩からどうぞ」

私はドキドキ高鳴る動悸を鎮めながら、カンジ先輩に先を譲った。

「ああ、じゃあ。
あのさ、この間の買出しの時、みのりちゃんと会ったときのことなんだけど。
好きな人がいるって言ってたよな。
つまり、なんだ、そのー…、うん」

少し言いよどんだカンジ先輩は、一つ咳払いして一気に言った。

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