かすみ草の夢
かすみ草の思い出
「まなみちゃん、これ持ってって!」

母に頼まれたおつかいの帰り、自転車で商店街を走っていると、花屋のおばさんに呼び止められた。

「まなみちゃん、かすみ草、好きって言ってたでしょ。
残り物で、あんまりもたないと思うけど、よかったら持ってって」

同級生の家である花屋のおばさんは、ときどきこうして私達クラスメイトに花を分けてくれる。

「ありがとうございます!」

私は、花の中でかすみ草が一番好きだった。

華やかなバラやユリの引き立て役で、花束の脇役。

そんなかすみ草に、自分を重ねていたのかもしれない。

私は引っ込み思案で、クラスでもあまり目立たない方だった。


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