かすみ草の夢
「ごめんなさい。大丈夫?」

私は立ち上がった彼に、もう一度声をかけた。

転んだときにぶつけたらしいひじを気にしていた彼が、顔を上げた。

「ああ、平気。
それより、荷物、散らかっちゃたぜ」

カンジ君は、倒れた自転車を立たせてくれた。

「ありがとう」

私も、飛び散ったかすみ草や、母に頼まれて買ってきた荷物などを拾い上げた。

カンジ君が手伝ってくれ、すべてを自転車のかごに入れると、カンジ君が足元から何か小さなものを拾い上げた。

「これ、おまえの?」

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