クレイジーワールド
「二度とこんな真似したら次は殺してやるからなぁ!」
男はそう吐き捨て、充分に少年を傷め付けた後持っていたこん棒を少年に叩きつけた。
バシンッ
少年に当たって地面に落ちたこん棒は、カラカラと乾いた音をたて転がった。
「チッ…糞が」
男はズンズンと足音を立てて去っていった。
「ハ…ッこ…ろ…殺してみや、がれ…っ」
必死に酸素を求めるが上手く呼吸が出来ない。
男の後ろ姿は目がかすんで良く見えず、男の耳に届いたかは定かでは無いが
少年はとりあえず安心して頭を地面にをついた。
後頭部の傷がズキズキ痛むが、身体を起こすと倒れそうになるので重力に身を任せる事にした。
「ハァ…ハッ…」
少年は目を細め、自分の頭の横に転がっている林檎を眺めた。
整った形をしていてキズは無くとても綺麗なものだった。これは少年があの男から盗って来た林檎だ。盗みが見付かってしまってちょっと面倒な事になったけど、
盗みで生計を立てひっそり生活している孤児の少年にはこんなのも珍しい事でもなかった。
< 6 / 16 >

この作品をシェア

pagetop