クレイジーワールド
「…そうだエミィ、はい、これ」
ジェイはそう言って地面に転がっていた林檎を掴み取ると、エミィの前に差し出した。
エミィは一瞬その林檎を見るがまたジェイに視線を戻す。
「また、盗って来たの…?そのせいでこんな怪我したんでしょ…?」
「エミィのためならこんな怪我どうって事ないよ?」
ジェイは我ながらくさい台詞だな、と心の中で笑うが、エミィはそうも行かないようだ。
それを聞いてエミィの目からはまたよけいに涙が溢れてくる。
「エミィが全部食べていいよ」
「嫌だよ…ジェイ君が全部食べて」
二人とも衣食住が満足じゃない生活をおくっている。
いつも空腹だろうに、お互いに譲り合うジェイとエミィは
とても強い絆で結ばれているのだろう。
「エミィの為に盗ってきたんだから、エミィが食べてくれないと」
「駄目…」
ジェイはそんなエミィを見てふっと笑う。
「女の子なんだから、強がらなくって良いんだよ…?」
するとジェイは手にしていた林檎を一口かじった。
そして林檎の欠片を口に含んだまま自分の唇をエミィの唇に重ねる。
「んっ…ぁ…は」
ジェイは口移しでエミィに無理矢理林檎を食べさせた。
拒むエミィは可愛い声をあげながらも、ジェイの強引さに負けて林檎の欠片を受け取る。
ジェイの唇が離れると、エミィは赤面しつつ呼吸を整えた。
「美味しい?」
「……美味しい」
ジェイは起き上がってエミィの上体も一緒に起こす。
そしてエミィに林檎の実を持たせると、彼女のおでこにキスを落とした。
「はい全部食べて。僕は我慢できるから」
「…うん」
ジェイはすんなり返事をしたエミィを見てほっとした。
そしてエミィは持っている林檎を一口かじる。が、
「…エミィ?」
いきなりエミィはジェイに正面から馬乗りになると、今度はエミィからジェイに唇を重ねる。
「…っ」
今度はエミィから唇を重ねジェイの口に林檎の欠片を放り込む。
「…半分こ…//」
「エミィ…」
ジェイはエミィの涙を指でぬぐうと、エミィを優しく抱き締めた。
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