秘密の片思い
その夜、郁斗は初めて泣き崩れた。


俺がチケットを取らなければ良かったんだ。


自分を責めてしまう。


その夜は眠る愛の傍で郁斗は一睡も出来なかった。




* * * * * *




郁斗は窓際に立ち、外から視線をベッドに寝ている愛に移した。


規則正しい機械音が聞こえてくるだけで愛はぐっすり眠っている。




静かなノックの音に郁斗が出ると日菜と千波が立っていた。


「心配でね」


なんでこんなに早くにと言うような顔を郁斗がすると千波が言った。


日菜の目も真っ赤だった。


ふらふらと愛の眠るベッドの傍へ近寄る。


「愛ちゃん・・・・」


日菜がポツリ名前を呼ぶ。


「まだ一度も目が覚めていないんだ」


落ち込んだ声の郁斗が千波は心配だった。


あんなに産まれるのを楽しみにしていたのに、悲しみのどん底に突き落とされた弟・・・。


しかも、自分の試合を見に来る途中の事故では自分の責任だと思っていることだろう。




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