例えば、それがキオクだったら…
一人で歩く校庭。無駄に広く感じる。

流石冬だけあって、辺りはもう薄暗い。

いつも通る道を、少しだけ新鮮な気分で歩く。

コンビニの前を通り、近道のために街頭のない道を行く。

迷子にはならないだろう、など考えながら、寒いのは嫌いだから早めに歩く。

と、いつも煩く吠えているバカ犬の居る家の前を過ぎた所で、ふと足が止まった。

「………」

…噴水公園だ。



『双方の想いが重なる時…運命の扉は開かれる…』



公園中央にある噴水を見つめ、頭に過ぎったのは

晴香に聞いた、くだらない噂話だった。

興味なんて、無いと思っていた。

しかし、今こうして足を止めてしまっている自分がいる。

「………所詮、噂だろ…」

呟いて、噴水の方へと歩み寄る。

「……双方の想いが…重なる時………」

噴水の前まで来て、印象強い言葉を口に出してみた。

そして、しっかりと噴水を見つめ、静かに想いを積もらせていく。





「……俺は…」

そうだ、俺は……

「………」

ずっと、俺は……

「……ティ…」

ずっと…ずっと……

「……エンプティ…」

…知ってたんだ…








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