例えば、それがキオクだったら…
「あなた、さっきこの噴水の前で、色々思いを巡らせていたんでしょう?」

女は淡々と話す。

「………」

「質問にはちゃんと答えて」

「…あぁ」

一方的に支配されてるようで、珪にとっては面白くないが

とりあえず状況を把握できないことには始まらない。

仕方なく女の言葉に従う。

「それよ、それ」

「…っ…どうして、叩く…?」

珪が頷くと、女は突然珪の頭をぽんと叩いた。

当然、嫌な顔になる珪。

そりゃそうだろう。訳も無く叩かれれば、誰だって不快だ。

……いや、訳はあるのかもしれないが。

「にっぶいのよ、君」

もの凄く簡潔に理由を述べる女。

だが、鈍い奴に鈍いといっても、理解して貰えないものなのだ。

「…は?」

「もぅ~…どこまで言わなきゃなんないのよ…」

女の方は少々疲れ気味で、

親に教えてもらった答えが間違っていた時の子供のような目で

しらーと珪を見る。…もとい、睨む。

「双方の想いが重なる時…運命の扉は開かれる…」

「………」

「心当たり…あるでしょ?この言葉」

有るも何も、大有りだった。

ずっと心の中で響いていた言葉。

ついさっき、そっと囁いてみた言葉。

「…うん、流石に気づいたかな?鈍感くん」




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