ノンステップ・シュガー
新崎はそう言って立ち上がったかと思うとすぐに私の前に立ちはだかって、その次の瞬間、私の唇は新崎に奪われていた。

「ちょっとっ…」
「……教えて欲しいんでしょ?」
「はあっ?だから…」

まって、と言いかけた口は再び新崎におおわれた。相変わらず無表情な新崎にア然とする。いや、本当にまってよ!新崎が何をいっていて、今何をしているのかわからないんだけど!私、ただ理由聞こうとしただけなんだよ、意味わかんないじゃん新崎、なんで!?てかてか、ここ教室じゃん!私は成されるがままに、いつもと明らかに違う新崎の様子にとまどうことしかできなかった。

「新崎っ……」

私が新崎を突き放すと、私はみすえられたまま、またあのするどい視線で見つめられた。

「言ってよ」
「え?」

ぶっきらぼうに吐かれた言葉にビクと肩が反応する。

「教えてって、言ってよ」
「いや、それは…その…」

キーンコーンカーンコーン…

私をみる新崎の表情が心なしかいつもよりほんの少しだけ切なく見えて、その顔に動揺しているとチャイムが鳴ったのだ。先生がガラガラと扉をひいた音がきこえて、立ち尽くしていた私達は席に戻る。

私はまったくの、放心状態。



 
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