ノンステップ・シュガー
「相田」

高校に入り初めて喋ったのが新崎だった。その低い声が自分の名前を呼んでいるのに気付いて…一目惚れした。はずかしながら、一目惚れだった。「席、隣だよな」という新崎をまじまじと見つめてしまう。はじめて見る人や建物に期待と不安のいりまじっていた感情が、新崎が名前をよんでくれたことでなぜか安心できたのだ。なんでだろうか、新崎の声は、おちついた。
席が隣になったんだけどなんせ新崎は学校に来ないから。話もろくにできず、一学期はさみしくすごした。二学期に入ると、なんだかあの時好きだと思ったきもちがだんだんあいまいになってきていた。好き、なんだろうなと思いながら時はながれていたけど、新崎が来ればやっぱりときめく心。

新崎がすき。すごく、好き。

新崎が来なくなって、新崎が屋上によくいるってことを知ってからは、一日に一回は必ず屋上に行くようにしていた。新崎に会えるかもしれないって、ひそかな期待だけど、私はそれをかなえたくて。

「新崎っ」

貯水タンクに背もたれコクン、コクンと首を垂らしていた新崎を見つけたときはすっごく嬉しくて。
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