同類恋
…
無視したのは私のことが相当嫌いだからではなかった。
耳元から白いイヤホンが見える。
ああ、音楽聴いてるから私の声は届かなかったんだ。
それなら
中村くんの元に駆け寄ればいい。
…
だけど、そこまでする勇気は出なかった。
「お姉ちゃん、赤信号に変わっちゃうよ!」
ハッとした。
横断歩道を渡りきった親切なおじいさんが私にそう言っていた。
青信号が点滅している。
小走りで渡りきった。
そしてまた振り返ると
もう中村くんは見あたらなかった…。
そしてまた風が吹いた。