同類恋







無視したのは私のことが相当嫌いだからではなかった。



耳元から白いイヤホンが見える。



ああ、音楽聴いてるから私の声は届かなかったんだ。

それなら
中村くんの元に駆け寄ればいい。





だけど、そこまでする勇気は出なかった。




「お姉ちゃん、赤信号に変わっちゃうよ!」

ハッとした。



横断歩道を渡りきった親切なおじいさんが私にそう言っていた。


青信号が点滅している。




小走りで渡りきった。



そしてまた振り返ると
もう中村くんは見あたらなかった…。



そしてまた風が吹いた。
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