コトノハ 〜この気持ち、何て言うの〜
*
神社へ向かう道。
俺の隣にはチカ。
昨日まで考えてもみなかった。
手の届く距離にキミがいるなんて――。
「レイスは、神様にお願いしたから人間になれたんだよね?」
「そう。」
それはついさっきのこと。
「じゃあ、お礼言わなきゃね。」
「お礼?」
「『ありがとう』って。」
「…?」
「レイスが、人から嬉しいことをしてもらったら、言う言葉。」
嬉しい?
うれしい。
俺は嬉しい。
「嬉しい?人間になれて。」
「嬉しい!」
もちろん。
でも本当に嬉しいのは…、
「…人間になって……。」
「なって?」
なって…、
「…まだ、言わない。」
言わない。
本当に、
神様が叶えてくれた俺の願いは、
チカとこうやっていられるってこと。
俺が願ったから…。
でも、
何で願ったんだろう?
なんで、
こんな気持ちになるんだろう?
この気持ち、
何て言うんだ?
それを知るまで…、
言っちゃいけない気がするんだ――。