コトノハ 〜この気持ち、何て言うの〜
俺は、
オーナーをじっと見た。
何と言われようと願いを叶えるためには退かないんだ。
「…お久しぶりです。
レイスです。
去年まであなたの車だった…、レイスです。」
オーナーは一瞬驚いたみたいだけど、すぐにニカっと笑った。
「そーか、そーか、こんな所におったかぁ!」
オーナーの笑顔には偽りなんて見られなかった。
まっすぐな笑顔。
…チカの言ったとおり、
俺の『所有者(オーナー)』は俺の自由を奪うような人じゃなかった。
「道本さん、今までご報告しなくてすみません。」
チカは頭を下げた。
「知香ちゃん!」
すると突然、
オーナーが怒るように声を荒げた。
「オーナー!チカを責めないでください!
俺が言わないでくれって頼んだんです!!!」
「誰も知香ちゃんを責めとらんわぁ。
ただ『道本さん』なんて他人行儀な呼び方せんといてぇ!
どっかの会社みたいやん…。」
…たしか、
自分の会社だよな…?
「……えぇとぉ…、直人さん?」
「ん〜。『オーナー』もいいけど、名前ってのも新鮮でええなぁ。」
「「…。」」
俺のオーナーは『いい人』だけど『変な人』だ…。