コトノハ 〜この気持ち、何て言うの〜



直人さんにレイスの自立が認められた翌日。


レイスの『はじめてのお仕事』が始まった。


「チカ、チカ〜!」


レイスは真新しいスーツに身を包み、
いつも通りの笑顔でわたしの名前を連呼する。


うゎ…、
スーツってなんだかレイスに不釣り合いだな…。


じゃなくってっ!


大声で名前を呼ばないでっ!!


「レイスっ!

 今みんな『お仕事中』なんだから、もっと静かにしてよぉ。」


『みんなの冷めた視線に気がついて!』と、チラリと目線で示してみた。


「俺だって、『お仕事中』だよな?」


言葉は疑問形なのに、
なぜか確信を秘めた笑みを浮かべるレイス。


「まぁ…そうだけど。」


しぶしぶ認める。


「でなっ、コレ、何て読むんだ?」


『コレ』と言って指さされたのは、
書類のある一単語。


「えっと…?

 コレは『へいしゃ』だよ。」



記憶力はものすごいけど、
まだまだ知識が足りないなぁ…。


近いうちに辞典を買ってあげようっと。


「ふぅん…。

 分かった。

 ありがとなっ!」


「ひぁっ!?」


ビックリしたぁ…!


レイスは満面の笑みを浮かべて、
なぜかわたしの頭をなでた。


わたしがレイスに、
『新しい言葉覚えてすごいねぇ』ってしてあげるなら分かるけど…、
何でレイスに頭なでられるの!?


しかもみんな見てるのにぃ!


「じゃあなっ。

 また来るかもしれないけど!」


そう言ってレイスはすぐにどこかへ行ってしまった。



あー恥ずかしい。



…こんなにドキドキしてるわたしっておかしいのかな?




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