コトノハ 〜この気持ち、何て言うの〜


「直人さん!」


わたしが走って行ったのは直人さんの所。


「知香ちゃん?

 どうした、息切らして。」


わたし、
今きっとすっごいつらそうな顔してるんだろうなぁって思う。


それなのに、
直人さんはそんなのも全部ひっくるめて笑ってくれる。


暖かい笑顔。


なんだかお父さんみたいだな…。


「レイスに…、レイスに部屋をあげてください。」


直人さんの笑顔で安心したわたしは、
思い切って言い切った。


「…いきなりどうしたんや?

 いままで一緒で問題なかったんやろ?」


「だって…!

 わたしとレイスは恋人同士でもなくって…!」


『無関係』なんだもん…。


「まぁ、そやけど…。

 レイスは知香ちゃんと一緒がいいんじゃないんか?」


レイスは、
そうかもしれない。


でも…。


「…レイスはきっと、頼る人がわたししかいなかったから、そう思ってるだけです。

 わたし以外に、もっと他にいるから…。」


初めて会った人がただわたしだっただけなんだ…。


それだけなのに、
『チカ、チカ』って、
笑ってくれるレイスを見るのが……つらいよ。


なんだかレイスをだましてるみたいで、
胸がぎゅってなるよ。


「それはレイスに言ったんか?」


「…まだです。」


レイスはきっと…イヤっていうから…。


「ほんなら、言ってからにしぃ。

 レイスの意志も尊重せんとあかんよ。」


直人さんはまた優しい笑顔で言った。


「…わかりました…。」



わたし、
ちゃんとレイスに言えるかな…?


『別々に暮らそう』って。


ホントは…、
ホントは一緒にいたいのに――。




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