コトノハ 〜この気持ち、何て言うの〜





「オーナー!」


俺が行ったのはオーナーのとこ。


俺が頼れる人間は、
チカとオーナーだけなんだ。


「なんや…、今度はレイスか。さっき知香ちゃんが来てたで。」


「チカが…?」


チカの『用事』ってオーナーと会うことだったのか…。


…チカ。


「そう!チカ!!

 チカに…伝えたいんです!!」


「何をや?」


「俺の気持ちを…!

 何て言うのか分からないから…。

 俺の気持ちを、どういう言葉で言えば良いのか分からないんだ。

 だから、この気持ちを言葉で何て言うのか、教えてほしいんです!」


チカとどうしても一緒にいたい気持ち。


チカの笑顔が見たい気持ち。


俺が人間になるほど、
神様にそれを願った理由を…。


今チカに伝えなきゃいけない気がするんだけど、
この気持ちを伝える言葉を、
俺は持っていないんだ…。



「…その気持ちは、知香ちゃんに聞かなあかんな。」


しばらく黙っていたオーナーはこう言って笑った。


「チカに…?」


そうなのか…?


俺はてっきり、
チカだけには聞いちゃいけない気がしてた。


「…俺がその言葉を教えることもできない訳ではない。

 けどな、その言葉だけ知香ちゃんに言ったところで、意味はないんや。」


意味がない…?


言葉にはそれぞれの意味があるのに?


「その言葉だけで、お前の気持ちをすべて伝えられるなんて思っとったら大間違いや!

 大事なのはその言葉に込める想いやら、その深さやらやで!

 お前の思ってることを全部ぶちまけてみぃ!

 そしたらきっと、知香ちゃんが教えてくれるわ!」


「はい!ありがとうございます!!」


何となく、
オーナーの言う意味が分かった気がする。


急ごう!


チカが待ってる…!






…伝える言葉を持っているのに、気持ちが分からない女と、
気持ちはあるのに、その気持ちを伝える言葉を知らない男か…。


お二人さん、
大変やなぁ…。


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