コトノハ 〜この気持ち、何て言うの〜
*
「オーナー!」
俺が行ったのはオーナーのとこ。
俺が頼れる人間は、
チカとオーナーだけなんだ。
「なんや…、今度はレイスか。さっき知香ちゃんが来てたで。」
「チカが…?」
チカの『用事』ってオーナーと会うことだったのか…。
…チカ。
「そう!チカ!!
チカに…伝えたいんです!!」
「何をや?」
「俺の気持ちを…!
何て言うのか分からないから…。
俺の気持ちを、どういう言葉で言えば良いのか分からないんだ。
だから、この気持ちを言葉で何て言うのか、教えてほしいんです!」
チカとどうしても一緒にいたい気持ち。
チカの笑顔が見たい気持ち。
俺が人間になるほど、
神様にそれを願った理由を…。
今チカに伝えなきゃいけない気がするんだけど、
この気持ちを伝える言葉を、
俺は持っていないんだ…。
「…その気持ちは、知香ちゃんに聞かなあかんな。」
しばらく黙っていたオーナーはこう言って笑った。
「チカに…?」
そうなのか…?
俺はてっきり、
チカだけには聞いちゃいけない気がしてた。
「…俺がその言葉を教えることもできない訳ではない。
けどな、その言葉だけ知香ちゃんに言ったところで、意味はないんや。」
意味がない…?
言葉にはそれぞれの意味があるのに?
「その言葉だけで、お前の気持ちをすべて伝えられるなんて思っとったら大間違いや!
大事なのはその言葉に込める想いやら、その深さやらやで!
お前の思ってることを全部ぶちまけてみぃ!
そしたらきっと、知香ちゃんが教えてくれるわ!」
「はい!ありがとうございます!!」
何となく、
オーナーの言う意味が分かった気がする。
急ごう!
チカが待ってる…!
*
…伝える言葉を持っているのに、気持ちが分からない女と、
気持ちはあるのに、その気持ちを伝える言葉を知らない男か…。
お二人さん、
大変やなぁ…。