Do it like a dream
考えれば当たり前だったんだけどさ、俺が殺人なんて、できっこないってことも。
でも確かに、今、心が軽くなった気がしたんだ。
だからつい、空を仰ぎたくなるわけで。
見上げれば、秋晴れの空だった。雲が1つぽっかりと浮かんでいる。
この地球上から人が1人いなくなったのに、空はまったくの知らん顔。
朝のちょっとひんやりした空気が、静かな住宅街と、すでに葉を落とした木々と、俺らを包みこむ。
秋の遠くなる空が少しさびしかった。
「でもさホントに偶然ってあるんだねぇ…。
正夢なんてさ。健ちゃん超能力あるのかもね~!」
奈々の声が白い息になって、空に消えた。
「俺やばいかも」
このときの俺らは、そんな呑気な事を言っていた。