死言数
気がつくと辺りは暗くなっていた。
足下には明菜が倒れているのだろう。だろうと言うのは、はっきりと見えないのだ。明かりを点けなければ、何がどこにあるか知る事は出来ない。確実に明菜が動かなくなるまで、男はそこに立ちつくしていた。そうしなければいけない気がしたからだ。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
興奮しているせいだろう。呼吸はまだ荒い。その呼吸を強引に押さえ込み、男は外に逃げようとした。
<な、何があったんだ?>
記憶が完全に抜けている。理解できない。ただ、本能がここから逃げなければいけない、そう告げていた。
体を九十度ひねり、街灯の見える玄関へと歩き出そうとした時だ。明菜につまずき、勢いよく倒れた。
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