死言数
「殺したい・・・。」
「殺したい?誰を?」
「わからない。」
「相手がわからなければ呪いは出来ません。」
「では、呪いのやり方を知りたい。」
「やり方を?」
女は驚いた。今まで、自分で呪いを行うなどと言ってきた客はいない。普通は写真なりを持ってきて、その者を呪ってくれと言ってくる。例え名前がわからなくても、写真があれば呪いは成立するからだ。
しかし、その客の口ぶりからすると、名前も写真もどうする事も出来ないのかもしれない。女は思った。
「でも、殺すとなると・・・それなりに経験を積んだ者でも難しいですから・・・教える事は出来ません。」
「呪いで人は殺せないと?」
客の息が荒くなった。
「こ、殺せます。ただ、経験を積まないと出来ないという事です。」
女は客に怯えていた。下手な事を言うと、自分まで殺されそうな感じがした。
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