死言数
母親の教育は行き届いていた。いつも言われていた。「挨拶はきちんとしなさい。」毎日、毎日言われ続けた。だからだろう、誰もいない部屋に向かって明菜は言った。
「ただいま。」
もちろん、返事は聞こえない。
気にする事はない。もう、慣れた。そのまま部屋の中に入り、電灯の紐を探した。なかなか見つからない。探しているうちに、テーブルの角に足をぶつけた。ここら辺は、まだ慣れない。いい加減、テーブルに足をぶつけずに電気を点けられるようにしたいものだ。
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