死言数
「でもさ、お金が入っているなら、はじめの五通だけ受け取って、残り一通は受け取らなければいいんじゃない?そうしたら、五万も儲けられるよ。」
「そんなの無理に決まってるよ。カキコ、よく見なかった?手紙を五通受け取ったら・・・。」
そこで電車が大きく揺れた。
「前の車両が動きましたので発車します。」
<なんで、肝心なところで動くのよ。五通目、五通目を受け取ったらどうなるの?>
明菜は気になって仕方がない。
しかし、無情にも車両の揺れに気を取られている間に、二人の会話は進んでしまっていた。
「ほ、本当に?ヤバっ、そんなのだったら五万なんていらないよ。」
女子高生にとって、五万という金額はかなりのものだ。それをいらないと言い切れる、その理由はなんだろう。明菜は思った。そして、その事実を知らなかったとはいえ、訳のわからない手紙と一緒にいた福沢諭吉に心奪われた自分はなんなのだろう。そうとも思った。
<ねぇ、どうすればいいの?何か知っているんでしょ。話してよ。>
自分でも気がつかないうちに、二人の事を睨んでいた。それを気がつかれた。二人はそこで会話を止めた
<なんで、なんで止めるのよ。>
ますます視線がきつくなる。まさに逆効果だ。
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