雨上がりの月夜に
そうは言っても私は常々思っていた事が、『どの営業も顧客が違うのに同じ観光コースでいいものか?私は人と違った新しいコースを作りたいのだ。』


そうは言っても中々観光地に新しい見学場所など出来る事はない。


一度自分なりの新しいコースを作って見たが上司に駄目出しを食らった。


結局モデルコースどおりのものを仕上げた。


未知のものへの挑戦。新しいものを取り入れる。


そんな匂いが殆どない会社。


私が入社する時、新調した淡いグリーンのダブルスーツを不許可にしたのもこの人達だ。


以来、私は二十歳にしてオッサン臭い紺のシングルスーツばかりを着る事が多くなった。


仕事をこなしても顧客から代金を受け取るのが申し訳なくて仕方がなかった。


果たしてこの等価分、それ以上、楽しんでいただけただろうか?


そんな考えばかりが頭を巡っていた。


先輩とも相変わらずのやり取りが続いていた。


この人は私の気持ちも考えず、一方的に自分の思いを押し付け過ぎなんじゃないのか。


今考えるとぶっきらぼうな先輩なりの優しさだと感じ取れる。


< 10 / 45 >

この作品をシェア

pagetop