雨上がりの月夜に
翌日、担任から呼び出された。


「あのね、今まで出席番号1番の人は卒業しなかった事はないの。」


担任は困ったような顔で私を見つめた。

この学校は申し込み順が出席番号となっていた。


早くに入学を決めた人はそれだけ学校に関心があり、同時にそれなりの目標を持って将来のプランも考えて入学した人だろう。


担任は続けた。


「だから私も他の単位の先生方を説得して、卒業という事にしてもらおうとお願いしたのだけれど駄目でした。」


普段から、
『私と学校外で会っても声を掛けないでください。あなた達とはこの学校内でだけ生徒と先生という間柄ですから。』


なんて言っていた担任の言葉とは思えなかった。


私は
「そこまでしていただいてありがとうございました。留年するつもりはありません。」


その後は何を話したのか忘れてしまったが、今、思うと先生方は特に教員免許を持たない雇われ教師だ。


もしかしたら卒業生の人数で収入が変動したのかもしれない。


どちらにしろ、専門学校卒業という肩書きは欲しかったが、二年間の都会暮らしに辟易としていた。

そんな時、会社から電話があった。


採用の連絡だった。
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