雨上がりの月夜に
この仕事は自分には合わないな。


そう感じたのは入社して一週間たった頃。


学生時代に殆ど先輩後輩付き合いもなかった。


一つ年齢が上の先輩の営業マンとの付き合い方が殆ど分からなかった。


「分からない事があったら何でも聞いてくれよ。」


この先輩の他に営業は三人いたがどの人も年が離れていた。

そこへ私が入社したものだからこの一つ年上の先輩は私を良きライバルとして、互いに切磋琢磨しようと考えていたらしい。


この人と一緒に営業に出ても苦痛以外の何ものでもなかった。


私はあれこれ考えている最中。


当然、車内は無言になる。


耐え兼ねた先輩が
「何か分からない事はないか?」


と聞いてくる。


「いえ、別にないですね。」


すると途端に機嫌が悪くなり、
「あのさあ、こうして二人で営業に出てるんだから、もったいないだろ?どういった観光コースがいいとか、あの食事場所はどうですか、とか色々あるだろ。」

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