今も恋する…記憶
額縁の家
『さくらちゃん〃
この人と結婚したら
あんたの夢はみんな叶う
玉の輿とは、こんな縁談のことをいうの!
考え直し、あんたの
ためやから〃』
さくらにと縁談を持って来たのは、父方の伯母の利津子だ。
相手は藤家和彦、35歳、神戸市内に事務所を置く貿易業。
扱うのは、主に裁断機という、洋服の縫製工場に必要な機械だ。
2代目社長として…
規模はさほど大きくはないが、神戸では名の知れた会社を経営している。
自宅は宝塚に在った。
家族は母親の高子60歳。
それに、家族同様の手伝いの人がいる。
さくらは家族が少ないということが、気にはなったが、
伯母の言葉どおり玉の輿に乗ることにした。
『結婚しても、華道を辞めなくてもいい、家事もしなくていい、
経済も豊かやし、こんな条件はめったにないわ!
打算的と言われるかもしれへんけど、どのみち、
見合い結婚とは、こんなもんやと思う!』
さくらの取った選択肢は…
季節に例えたら、冬と迄はいかないが枯れ葉散る晩秋というところ
しかし、毎日が忙しくて、あっと言う間に7年目を迎えていた。
夫は相変わらず、一年中海外を飛び回り、バイヤ-を追いかけている。
一年のうちの半分以上は海外に出掛けていた。
だから
夫のいない…家の雰囲気には、なかなか馴染め無かった。
結婚式直後の新婚旅行も、仕事を兼ねての旅行だった。
旅行中24時間一緒にいたのは、たったの3日…
あとの5日間の昼間はさくらは一人であった。
その旅行から帰り、二人で家に着いた時の姑の顔が忘れられない。
『何か変やわ。
義母さんの目は、あの人だけに向いている。
私はこの人の妻なんよ!他人やけど、
家族なんよ…今日から』
姑の高子は夫の和彦だけを見ている。
さくらの顔を見ようともしなかった。
理由がわからない…
後で夫に聞いてみよう。
さくらは二人の部屋に入ったとたん、夫にとうてみた
「あなた、お母様は
私のことが、お気に召さないのでしょうか…」