今も恋する…記憶

その時のさくらは、
数秒だけ大人の女…


『あの時の雨は、
嬉しかった…

ちょっとだけ、 大人の女の気持に なれたん!』


菊池とのデ-トはその程度 …
それ以上のことは無かったからである。


ある時、神戸の加納町から北野町へと二人で歩いた…

その通りにはラブホテルが並んでいた…


さくらはそんな所を選んで歩く菊池に、少しだが期待した。


しかし、素知らぬ顔の菊池に、がっかりしたことを覚えている。


そのうち、さくらの胸がとても切なくなってきて

突然、ホテルの前で、自分の靴を拭いた。


汚れてもいない靴なのに…

菊池の気を引くためにやったのだが、

彼は一向に…
その気にはなってくれない…

サッサと、ホテルの前を通り過ごしていた。


『この人、
私みたいな、女の子では駄目なんやわ

ある意味、女やないと あかんのやわ…』


悔しいと思ったが…
さくらは、菊池に愛されたい思いを、

その時は胸にしまい込んでいた。






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