今も恋する…記憶

でも、今ここにいるさくらは、大人の女だ。


あの当時よりは、はるかに女といえると思う。


結婚、出産という女の関門を、通過していたからだ。

それに加えて、生け花という、芸術的な仕事にも、
磨かれたというべきか…それらが、全て女として
さくらの肥やしになったのだろうー


『そうや、あの時の うちとは、違うん〃』

さくらの中に菊池を見返してやりたい。


そんな悲しい女心が湧いてきた。


先程注文したカクテルが、目の前にある。

さくらがピンク色のグラスを手にしたら、


中には……… 赤いサクランボが見えていた。


『あの時のサクランボと いっしょやわあ…』


「あの時のサクランボの こと、覚えてる-」


-覚えてるよ! あの時は、急に雨が
降ってきて、

駅に着いたら、君が僕の背中を拭いてくれた-

「そんなこと、 まだ覚えてたん!」

-覚えてるよ!
ず-と僕は 忘れてへん〃-






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