今も恋する…記憶
阪急六甲の駅前からタクシーに乗り、
菊池の待つ六甲の山の麓のホテルへと向った。
『あの人うちが遅いから 待ち切れへんで、 困ってるかもしれへん』
そう、思っただけで、
身体が熱くなっていた。
顔が火照り、目の前が見えなくなっている。
タクシーがホテルの玄関に着くと、
さくらは菊池の待つ部屋へまっしぐらに歩いた。
部屋をノックすると、 すかさず、ドア-が明けられ…
菊池の手がさくらを引き寄せていた。
ドア-を閉めた菊池は、そのまま、さくらを壁に押し付けると、
さくらの唇を奪った…
さくらは、菊池の片手で頭を押さえられていたから身動きも出来ないでいる。
『うちのこと、こんなに 好きなん…
そしたら、何であの時お嫁さんにしてくれへんかったん!
そしたら、ずっと一緒にいてられたのに…』
さくらは、そう思っただけなのに…
-さくら、ごめん! ごめんやで〃-
『また、この人いうたら 謝ってるわ!
うちのこと、
わかったん
ずっ-と 一緒に いてたいねん…
そのこと、わかったん』
この頃では、さくらのほうが、積極的になっている。
夫は相変わらず家を留守にしている。
たまに、帰宅しても、
さくらには見向きもしない…
ましてや、さくらを抱くようなことは無かった。
ところが、さくらと菊池の密会も………
菊池の転勤という、
出来事であっけなく終わることに………
菊池との、三年の月日はあっというまの夢のごとく 消えたのである…