今も恋する…記憶

「 ごめんなさい〃」
…と、
一目散で逃げたん〃

そんなことがあったが…さくらが職場の雰囲気に慣れたころには、

菊池と話をするようになっていた。

いつの間にか二人で、社員食堂へ昼食を食べに行くようになり


それからは、菊池がさくらに美味しい店があるからと

あちら、こちらと連れて行ってくれるようになったのだ…


さくらにとっては初恋の人だが、

菊池には、ただ妹のように思われただけで、
それからも、
片思いが、しばらく続いていた…

だが…半年もたたないうちに、
さくらは菊池のことを諦めたのだ。

それが、最初の別れ-

その時は、随分と苦しい思いをした。


諦めたといっても、見せかけだけ…

諦めると言って、すっぱり忘れられる恋などありえない。


好きでも、思いどおりにならないから、諦めるのだ。

さくらは… 会えない菊池のことを、夢の中に求めた…

毎夜…思いだしては、夢の中で菊池を探し…さまよっていた。


ある夜など、夢に菊池が現れて…


-さくら〃
足のサイズ、23cm やったね!-


菊池がさくらに、靴を買ってくれるというのだ-

さくらは、嬉しかったが、 これでは、まるで今も恋が続いているようではないか!


さすがのさくらも、この時ばかりは、びっくりして、 目が覚めた…


目が覚めた後、靴があるのではと まわりを探した。

しかし、そのようなことが あるわけもなく…

正気に戻ったさくらは、頭の中が真っ白になっていた。


菊池が毎夜3日も続けて夢に現れ、さくらを抱いた。

さすがに…
この時は、自分は気が狂ったのではないかと、悩んでしまった…

その夢を見た翌朝、
庭の花を一輪だけ切り、
花瓶に活けると…
鏡の前に置いたのだが、

その鏡に話かけるという、恐ろしいことをしていた…


女の魂が籠るという鏡に…





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