今も恋する…記憶
朝になり、眠りから覚めると…
やっぱり、一人だった。
『あの人が、あんなにもあっけなく逝ってしまうなんて…
考えてもみいひんかった。
うちは、一人やけど…
あの人はやっぱり、 死んでも愛人と一緒に 暮らしてると、思う…
うちは、そう思う〃』
今年もあと僅か、静かに師走の夜が更けていく…
さくらは今、年賀欠礼状を書いている…
最後の一枚を前にして、書こうか、書くまいか 迷っていた…
宛名は菊池だ。
さくらは…思い切って書く!
そのハガキの余白にはこう書いた…
『お元気ですか…
とうとう、私は一人に なりました』
毎年の年賀状には、
いつも
『お元気ですか…
私はいまだに、
花を相手に格闘しております。
そんなことで、
私の気が晴れるわけではないのですが…
敢えずは、
花に囲まれていると…
玉響の幸せを感じられ ますので…』
書いた後で、いつも後悔していた。
いつまでも、自分が諦め切れないでいることを、
菊池に知らせているように思えて…
しかし、今年は夫が亡くなり、事情が変わった。
あの別れた日から、実に30年もたっていた。
最初の別れからは、40年以上もたっている…
気の遠くなるような時間が過ぎ去っていたが、
未だに菊池への未練が、断ち切れずにいる…
いったい、自分は菊池のどこに、どこが好きなのかと、自分に問うてみた。
たしかに、菊池の肉体に溺れたことも、過去にはあった…
しかし、理由はそれだけではない。
菊池は割合にク-ルなところがあり、
時々、さくらに見せた横顔は、どことなく冷たさを感じさせていた-
『うちには、
ようわからん…
気の遠くなるような時間を費やした!
ほんまの理由は…』