今も恋する…記憶

さくらは、この手紙を書き終わると、
しばらく、ベッドに横たわっていた。

身体の力が抜けてしまったからだ…

無理もない。
さくらは60歳も過ぎて、
このような日が巡ってくるとは、

思ってもみなかったから興奮している…

頭で考えることに、さくらの肉体がついてゆけないのだろう…

夫が亡くなり、この広い家にたった一人で…
暮らすようになってから

何か自分を支えてきた、女の意地とでもいおうか
そのようなつっぱったものが、消えて無くなっていた…

これでは、自分が駄目になってしまう-

危機感が湧いて時々、寝込んでいたのだが、

菊池からの返事を待つ 毎日が続いていた…


菊池からの返事が届いていた。
それにはさくらに対する罪があるという-

そんなことに、対しての詫び状だった-

さくらに今すぐにでも会いたいと思うが、

さくらの夫の一周忌が済むまでは我慢しようという、 内容だった。


だから、会える日までは 元気でいてくれと-

自分も頑張って生きるからという、

文面の最後には、 そう書かれていた-


さくらは、その手紙で菊池が患っているのではと、心配になっていた-
自分も先日来の風邪が直り切らずに、ぐずぐずと引きずっていたからだ-

その後、また菊池から手紙を貰ったのだが…

ずいぶん、さくらの体調を 心配している内容だった。

そして、菊池は年のせいか涙腺が緩んで涙がこぼれたと書いてよこした…
それも、過去においてはサッサと、

さくらのことを 自分の嫁さんにしておけば

良かったもをと…
後悔しているという-
今さらではあるが、自分は愚か者だと〃

さくらの想定外の文面だった…


『やっぱり、あの人と、 うちの間には…

赤いい縁の糸が結ばれていたのかもしれへん〃』



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