今も恋する…記憶
「友利子は…
どこにいるん」

さくらは、
一目妹に会って

どうしても、息子のことを頼んでおきたいと、思ったのだ。


「叔母さんは売店へ、 タオルを買いに
いってる」


「そう…
会いたかったのに」

「母さん、何言うてんの… すぐに、会えるよ」
孝一郎は、そう言ってくれたが、

さくらは…
もう、無理だと思った。
何故なら、いま自分がどの 程度の容体なのか、自分にはわかるからだ。
息子の声が聞こえていても …その姿は、おぼろげに見える程度-

だんだんと、さくらの
意識は薄れていく…

「最後に息子の孝一郎に 会えて良かった…
ほんまに良かった」

「孝一郎ありがとう。 会えて良かったね」


さくらは見えなくなった目で、孝一郎を探しながら、 そう言った…

-母さん、母さん〃 -
孝一郎の呼ぶ声が、
だんだん遠くなっていた…

その時、さくらの見えないはずの目に、菊池の姿が、写っている…


病室の扉の前に立っていた。
でも、言葉は無い…
にこにこ笑っている。
そして、さくらに手招きしている…

「さくら、おいで~」
言葉が無くても、
何故か、手に取るようにわかった-




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