【短編】限りなく虚無に近い黒
だけど、ここから会話は続かず、気まずい空気と暖房の暖かい空気が僕らの周りに漂い始めた。


うわ、どうしよう。ここから何か気の利いた軽快なトークでもしてみせようか。


成功すれば、間違いなく気まずい空気は霧散する。だけど失敗した場合どうなる?


よく見積もっても、気まずい空気は濃さを増すだろう。


しかも僕には軽快なトークが出来る程口が達者じゃないし、間違いなく失敗する。


あれこれ打開策を考えるけど妙案は思い浮かばない。どうしよう。いっそこのまま逃げようかな。


「……えと」


「はい?」


不意にか細い声がした。それは目の前にいる八幡の出した声だった。


沈黙の突破口を開いてくれた八幡は俯き、落ち着かない。


「あの、八幡さん?……大丈夫?」
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