とある少女の猶予期間
終章 狂いに狂って「愛してる」




お母さんのあたたかな笑顔が、胸を締め付けた。
私は込み上がってくるそれを、必死にご飯で飲み下した。
テレビからは、楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
リビングは居心地の良い場所だった。
けれど、それ以上に居心地の良い場所を、私は既に知っている。
未練はない。
戸惑いもない。
悲しみもない。
何もない。
今日の晩ご飯が、私の大好きなものだったとしても。
この場所が、私の大好きな場所だったとしても。
時間は止まらない。
止まらなくていい。
窓の外は、街灯と月明かりだけが頼りの、暗闇と化していく。
現在の時刻は、指定された時間の数十分前。
そろそろ、行かなくては。




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