きゃっちぼーる
 窓からは生徒たちの姿が見える。
 
 正面と机の上を、顔はひたすら行き来している。

 落伍する恐怖と戦っているような表情だ。

「んー。そうだね。さぼりだよ。そういう君は?」

 一哉は改めて鏡に顔を向け、軽く言った。

「それはいけないな。不良だね。ちなみに私も不良って感じ。学校サボっちゃってる。同じ穴のなんとかだね。狐だっけ? ムツオビアルマジロじゃないってことはわかるんだけど」

 鏡が腕組みをして笑った。

 一哉は鏡と初めて出会った時のことを思い出していた。

 あのときも、目の前の娘は人を試しているような笑顔を浮かべていた。







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