きゃっちぼーる
 昼休みの教室は、授業中とは違って十代の声に溢れていた。

 テレビドラマ、映画、芸能人の話、色恋沙汰、夏らしく怪談話。
 
 日本の将来について熱く意見を交わしているグループの横で、中間テストの対策として参考書を広げている者もいる。

 ほんの少し何かを企んでいるような、邪悪な笑い声も混ざっている。

 そんな教室に一哉は居座っていた。

 何かを探していた。

 一哉もそれがなんなのか分からなかった。

 でも、すぐそばにあるのは感じていた。
 
 しかしつかもうとがむしゃらに手を伸ばしても、遠ざかる気がした。

 虹でもつかもうとしているような気持ちだった。

 それでもなんとかして、見つけたかった。

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