きゃっちぼーる
「そうだね。多分、多分だよ? 君が寝ている理由と同じだと思う。勘だけどね」 

 鏡は腕組みをすると、胸を張り、勝ち誇ったように笑った。

 一哉は口を開けっ放しにしたまま、鏡の口元のえくぼを見つめた。 

「なにじろじろ見てるの? 惚れた?」

 鏡がにやにやしながら言った。

「あっ、え?」

 一哉は我に返ってすぐにうつむいた。

 冗談とは分かったが笑えなかった。

 仏陀の手の平で踊っている、孫悟空のように思えてしまった。
 
 もて遊ばれるのは不快だが、同時に、一哉は、麻生鏡が思った通りの人間だったので、やはりこんな奴だったかと、自然と表情が緩ませていた。




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